美術・造形作家

武藤はるかさん

陶芸家の両親の影響もあり、幼い頃から絵を描くことが好きで、大学では油絵を専門に学びました。現在は、水戸の私立高校で美術教諭をしながら作家活動をしています。作品は抽象画のつもりで、「肌触り」や「匂い」や「線」や「色」など日々感じた事を日記のように表現しています。

昨年の夏、銀座のギャラリーで展示をしていると、いきなり作品の前で、初対面で名前も知らないおじいちゃんに、「あなたは自然が豊かな所で、美味しい物を食べて、のびのび育ったんでしょう」と言われたことがあります。「出身は茨城県の常陸太田市です」と答えると「そうか、そうか。伝わってくるよ」と。この時何だかとても嬉しくてはじめて故郷というものを意識しました。薪の燃える匂い、野ざらしの鉄屑、畑の筵(むしろ)や轍(わだち)、山にかかった霧、無意識に私が心地よいと思って選ぶ形や色は、心象風景でもある故郷の風景がベースであり、それが美意識として私の中にあるのだと思います。

中学生の頃、美術部として板谷坂や梅津会館をスケッチした思い出があります。構図やパースが難しくて、四苦八苦していました。昨年美術部顧問として生徒と一緒に、たくさんの方にご協力頂きまして、鯨个丘商店街で制作合宿を行わせていただきました。板谷坂を描く生徒を観て嬉しく思いながら、アドバイスにまた悶々としました。私にとっては懐かしいけれど新しい発見がある場所、それが常陸太田市です。新型コロナウィルスの影響で次々に展覧会が延期され、発表のあり方や制作の意味を考え直す日々ですが、これからも生徒と一緒に作品を作り続けていきたいと思います。

1989年 常陸太田市生まれ。2011年 筑波大学芸術専門学群 美術専攻洋画コース卒業。
第79回独立展 東京国立新美術館(2017年新人賞)。茨城県芸術祭美術展覧会 茨城近代美術館(2014・2015年優賞 2016・2017年奨励賞)。2018年 Art Trial at 梅津「ハンカチ落としに」常陸太田市梅津会館。農村舞台アートプロジェクト2018 愛知県豊田市